海綿から発見された物質由来の新しい抗癌剤の全合成に日本人研究グループが成功

海綿から抗がん剤作用を持つ物質の全合成に成功

日本の医薬品メーカー、エーザイとハーバード大学岸義人教授らを中心とする共同研究グループは抗癌作用をもつ物質「E7130」の全合成に成功しました。全合成というのは単純な部品から生物学的過程の助けを受けずに行われる複雑な有機分子の完全な化学合成のことを指します。このE7130は海綿から発見された天然物をベースとしたもので、非臨床試験の結果、研究チームは抗癌作用が確認されたと報告しています。


E7130発見の歴史

E7130は1986年に名古屋大学の平田義正教授と上村大輔教授によって、クロイソカイメンから単離された「ハリコンドリンB」という物質がベースになります。細胞分裂で重要な役割を果たす微小管の伸び縮み(ダイナミクス)を阻害する作用を持つハイコンドリンBは平田教授と上村教授によって「マウスのがん細胞に対して非常に強い抗癌活性を示した」と報告されていました。

ハイコンドリンBの欠点

残念ながらハイコンドリンBの単離方法は非常に複雑で、100段階以上の工程を踏んだ上で得られる量はほんのわずかでした。また、クロイソカイメンは実験室での飼育難易度がとても高く、研究に十分な量のハイコンドリンBを抽出できるだけのクロイソカイメンを用意するのは非常に困難でした。

ハイコンドリンBの効果

主に進行性の乳がんや軟部腫瘍の治療薬に用いられている「エイプリン」と呼ばれてい治療薬はハイコンドリンBをベースにしてエーザイが開発しました。2010年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認も得ています。

今回の功績 E7130作製の効率化

エーザイと岸教授らの研究グループは31種類の不斉炭素を厳密に制御し、徹底した品質管理体制のもと99.8%という純度で10g以上のE7130を全合成することに成功しました。管理が困難だったクロイソカイメンからハリコンドリンBを抽出しなくても、E7130を安定して供給することが可能になったことになります。


今後の研究への期待

岸教授「1992年の時点では、ハイコンドリンのグラムスケールでの合成は到底考えられませんでしたが、3年前、私達はE7130の新規合成法についてエーザイに提案することができました。有機合成は数年前に不可能であった複雑な分子の合成を可能とするほど発展したのです。その新規合成法を用いることでE7130の大量合成が可能となったことについて大変うれしく思います。」

天然由来の創薬では「大量合成が可能かどうか」という点で大きな課題が残ります。今回の発見でE7130全合成に成功したことで新しい抗癌剤の開発は大きく前進したと言えるでしょう。今後の研究の発展にも期待ができそうです。


 

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